335639 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

JUNK ISLAND

第4話

「イキシア」
第4話
ヴェイスたちは中継基地に着いていた。
中継基地はもともとは同盟軍のパルムでの拠点だったのだが、
すでに放棄されているのをガーディアンズが買い取って
補給用のロボットを置いているだけだ。
だからそんなに基地っぽくなく、自然の中の廃墟といったほうがしっくりくる。

ヴェイスと淋の後方をガースが疲れたような足取りで歩いている。
それもそのはず、淋の見ていなかった発言により、ガースは原生生物を倒しては
淋のほうを振り返り、また見ていなかった発言を繰り返すという
無駄なことを繰り返していた。

結局中継基地に着くまでの間は全てガースが原生生物を倒している。
だがさすがにもう無駄だと悟ったのか今では後方を歩いている、というわけだ。

「ハァ・・・ハァ・・・。もういい、知るかこの野郎!
もう俺様は手出ししねぇ・・・。」

そう叫んでガースは草むらに体を投げ出す。
どうやら休憩のようだ。ヴェイスたちはあまり疲れていなかったが
特に急ぐミッションでもないので言うとおりに体を休める。

ガースは草むらに寝転び、淋は適当な岩を見つけてそこに座っている。
ヴェイスもそれにならい、適当な日陰を探して座ることにした。
歩いて少し火照った体にさわやかな風が吹きぬける。
気を抜くとミッションだということを忘れてしまいそうな平和なひと時だった。

10分ほどそのまま静かな時間が流れていく。
すると突然淋が岩から飛び降り日陰にある白い花をまじまじと見つめる。

「ほぅ、こんなとこにめずらしい花があるな。これは・・・イキシアか。」

「へぇ花に詳しいんだな、意外だ。」

つい口に出てしまった・・・やばい。何て言われるかわからない。
そう思いながら冷や汗が背中に流れると同時に淋が言葉を発する。

「あぁ、これは私の国では槍水仙と言ってな、つぼみは日に当たると開くんだ。
だから、このつぼみは日なたに移してやらないとな。」

これまた意外だった。てっきり何か罵声が飛んでくると思ったのだが、
こんなに穏やかな顔をした淋を初めて見た。
会ったときは表情があまりなく人形のような綺麗さだったが、
今は自然な綺麗さが見てとれる。

「花言葉とか・・・あるのか?」
特に興味はなかったが、気づいたときにはこんな柄にもないことを聞いていた。

「花言葉・・・か。まさかお前からそんな言葉が出てくるとはな。」
少しだけ、淋が微笑んだような気がした。
馬鹿にした嘲笑ではなく、ただ純粋な微笑み。
素直に・・・綺麗だと思えた。

「イキシアの花言葉は『誇り高い』それと・・・
もう一つあったんだが忘れたな。」


そう言って淋はつぼみを日なたへと移した。

「『誇り高い』・・・か。確かに、そんな感じがするな。」

不意にそんな言葉が口から出た。
暖かい日差しが空から降り注ぐ。槍と呼ばれるつぼみはゆっくりと開き
閉じられていた白い綺麗な花びらが現れる。
そこには一輪しかなかったが、日なたに移されたイキシアの花は凛と咲いていた。



それからしばらくしてガースは回復したのか起き上がり後ろからやってきた。

「休憩は終わりだ。そろそろディ・ラガンの巣へ向かうぞー。
こっから先はSEEDの感染率が高い。
モンスターも少し手ごわくなるだろう。
お前らはちょうど近距離のセイバーと遠距離のライフルだ。
お互い連携をとりながら一体ずつ撃破していけ。俺様はもう手出ししねぇ・・・。危なくなったら助けてやるよ。」

悪態をつきながら一番バテていたガースが指示をだす。
派手な動きで全ての感染した原生生物を倒していたのだから無理はないが・・・
何だか説得力がない。
本来ならココで応急薬のモノメイトなど補給するのだろうが、
見ていただけなので補給する必要もない。

ここからが本番だ、と気合いをいれながら出口へと向かう。
淋はすでに出口で退屈そうに腕を組んでいた。


出口を出てしばらく木々のトンネルを歩き、抜けるとまたさっきのような広い平野に
でた。
そこにはちょこんとした緑色の小さい生物がこっちを見上げている。
体長は50cmぐらいだろうか。とがった頭に黄色い目が特徴的だ。

「何だこいつ・・・?」

その生物の外観から、思わず無防備に近づいてしまった。

「あ、馬鹿。そいつは・・・」
ガースの静止の声が入るや否や
その小さい生物は物凄い勢いで俺の腹へとロケット頭突きを繰り出す。

「ぐぼぁ!」

声にならない悲鳴をあげて2mほど俺は吹き飛びしりもちをつく。
全く情けない後景だったろうと思う。
実際淋は呆れたように俺を見下していたのだから。

「こいつは『ポルティ』と言ってな、
あんまり害は無いが油断して近づくと・・・そうなる。」

ガースが吹き出すのをこらえながら説明している。
それを隠そうとしているのがみえみえで何だか腹がたつ。
まぁ・・・こうして俺の最初の戦闘は最悪な状態から始まったわけだ・・・。

                                   続く


© Rakuten Group, Inc.